さあ、釣りに行こう

ーー あの日へ ーー

 

初めて釣りをしたのはいつですか・・・?

最後に釣りをしたのはいつですか・・・?

子供の頃、
大人になって、

はじめて釣竿を握ったあの日、
見上げた空はやけに青く、
そして、海はそれ以上に蒼く感じたあの日、
水面のきらきらと同じくらいに
あなたの瞳もきらきらと輝いていたはず。

さあ、釣りに行きましょう。
あの日の、あなたに会いに・・・・

 

 

 


ーー 父との日々 --

 

子供のころ
父は怖い存在で
何となく近寄りがたくて 距離を置いて話をしていた

そんな父が 僕を釣りに連れて行くようになった

大きな竿をかかえ 見よう見まねで初めて釣りあげた
とてもとても とても小さな魚

自慢げに差し出した僕の頭を 父の大きな手が優しく包んだ
逆光で見えなかった父の顔は 笑っていたのだろうか・・・?

中学にあがる少し前
父と周りのみんなが
「今日はだめや。全然釣れんなぁ」と話していた釣り場で、
僕の竿は大きく曲がった

無我夢中で釣り上げた
とてもとても とても大きな魚

だけど僕は 足元の大きな魚を見下ろして立ちすくんだ

そして
父の死角の内側で 僕はその魚を逃がした

父に勝ってはいけない気がして
父よりも大きな魚を釣ってはいけない気がして
父ともう釣りに行けなくなってしまう気がして 僕はその魚を逃がした

いつもの僕なら 大威張りで声をあげるけれど

それほど僕は 父との釣りを大切に思っていた

「釣れんか?もう帰ろう」
大きな手が僕の頭を優しく包んだ

振り返って見上げたけれど 逆光で見えなかった父の顔

笑っていたのだろうか・・・?

父は きっと笑っていただろう
僕も 笑っていたから

さあ、釣りに行こう

僕の 子供たちを連れて

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